2019-03-28 読了 (図書館で借りた)
朝日新聞出版
これは面白い。
初の(そして今のところ唯一の)女性横審(横綱審議委員会)委員であった内館牧子さんが、在任中に週刊誌に連載していた、横審でのやりとり・発言などのレポート。横審は正式な議事録とか作っているのだろうか。せめて議事概要だけでも日本相撲協会のWEBで公開してほしいものだ。(していたらすみません)
内館さんがその任を務めていたのは2000年~2010年ごろのようだ。その任期のはじめのほうには貴乃花と武蔵丸との優勝決定戦(当時の小泉首相が表彰式で「感動した!」と言った一番)があり、任期が終わるのとほぼ同時に朝青龍への引退勧告。なかなか激動の時期。
この本の中でも触れられているが、「土俵上の女人禁制」について、内館さんは「女性が土俵に上がることには反対である」と明確に発言されている。この問題については、最近でも、宝塚市での巡業の際に、女性市長が土俵上で挨拶するのを断られたりしているが、その理由を協会は明確に答えているのだろうか。私は、この本を読んで、内館さんの主張に納得した。男女平等というのはグローバルスタンダードだが、伝統芸能・文化や神事にグローバルスタンダードを持ち込むのは筋違いということだろう。
本書で繰り返し述べられているが、大相撲は勝ち負けを争うただのスポーツではない。何百年もの歴史・伝統を受け継いでおり、歌舞伎などと同様にある種の伝統芸能みたいなものである。それがゆえに「公益財団法人」に認可されてさまざまな優遇を受け、NHKでも全国放送され、力士の地位も保護されている。それがゆえに「品格」が要求される。プロレスやボクシングなどの選手にくらべてみればわかる。
まあ、(控えめの)ガッツポーズとか、花道を下がった後の「クソッ」という声とかくらいは、あってもよいのではと思う。また、外国人力士をこれだけ受け入れておきながら、千秋楽の表彰式では、国歌斉唱として「日の丸」しか流れないのもどうかと思う。それらを思うと、今年2019年1月場所の千秋楽で玉鷲(モンゴル出身)が遠藤に勝って優勝を決めた瞬間に、数秒間土俵上でじっとしていたシーンは、思い出すだけでも感動する。あんまり関係ないかもしれないけど。
あと土俵上の女人禁制問題は、土俵上で相撲だけやればよいものを、本場所では理事長挨拶や表彰式も土俵上でやるし、巡業では各種の出し物(お好み: 相撲甚句、髷結い実演、など)もやったりしているから誤解を招くのではないか。相撲の取組以外のものは別途ステージを用意してそちらでやれば、土俵上は神聖な場所である、と明確に言えるだろうと思う。