2011-01-30

スノーボール, アリスシュローダー

Alice Schroeder, The Snowball: Warren Buffett and the Business of Life
伏見威蕃
日本経済新聞出版社

「上」「下」合わせて1,200ページを超える分量。それでいて原注は本にはついておらず、出版社のwebpageからPDFをダウンロードするという形式。図書館で借りて読んだが、1度(1回につき2週間借りられる)では「上」の途中までしか読めなかった。一度返して再度「上」「下」を借り、さらに2週間後に「下」だけを再度借りてようやく読み終えた。著者は準備・執筆に5年をかけたという。

Warren Buffett は偉大な投資家と言われているが、結構直接経営にも乗り出している (自身の会社 Berkshire Hathaway を除いて)。

安く買わなければ儲けられない。当たり前だが、それを実践するためには本質的な価値を見極める必要がある。株式は価格が変動してリスキーだが、本来の価値を見積もることで、可能性のある下振れの幅を極限まで小さくすることができる。とはいえ凡人には真似ができない。「オマハの賢人」と言われる所以か。

著者は、「サブプライムローン問題」と呼ばれている金融危機の本質を極めて分かりやすく解説している。問題は、ローンを貸している銀行などが、そのリスクを他人に転嫁するためにCDOという細切れの債権をまとめたものを作り、さらにその買い手がそのリスクをヘッジするためにCDSを買う、という循環で、みんながリスクを下げられたと思い込んで、どんどんローンを貸し出して規模が膨らんだ、というところのようだ。

3つの信条:
ひとつ、味方は不可欠である。ふたつ、約束は神聖なものだから、あたりまえのことだが、めったなことで制約などしてはならない。三つ、人目を惹く派手な行為でなにかを成就できることはまれである。
ピラミッドの経済効果についての考察:
ファラオが自分のためのピラミッドを造るのに1000人を雇い、こうつぶやく。「給料が経済に流れ込むし、金は一銭も無駄にはならない、と。多くの寄贈や消費が同じような形で行われています。馬鹿げているし、倫理的にも間違っているはずです。でもピラミッド建設用に石を運ぶ人々に雇用をあたえるのはすばらしいことだと考える人々もいます。その連中は間違いを犯しています。それは生産的ではない。そういう人々は、投入するものだけを考え、生み出されるものについて考えていません。
仮に自分のためにピラミッドを造りたいと望むなら、そして、そのために社会から多くの資源を奪うなら、そのために莫大な代償を払うべきです。それ相応の税金を払うべきなのです。大きな部分を社会に分けあたえ、病院の建設や、子供たちの教育にまわせるようにしなければなりません」
ほとんどそのまま国の財政にも言えそうだ。
バフェットのほんとうのすごさはお買い得品を見つけることではなく(たしかに多数見つけてはいるが)、適正な値段のついている会社を長い歳月をかけてお買い得品に仕立てあげることにある。
  • 小さい頃卓球に熱中
  • ソロモン・ブラザーズ, LTCMといった「ウォール街」企業とも関係していた
自分の好きなことをしなさい。自分が尊敬できる人のもとで働きなさい。
自動車をくれる精霊(ジン)の話:
これはきみが一生で最後に手に入れる自動車なんだ。だから、人生の最後まで乗り続けることになる

日本百名山, 深田久弥

新潮文庫
2011-01-30 読了

寝る前とか風呂の中とか、細切れ時間を利用して、少なくとも1年以上かけてようやく読み終えた。知らない山がかなりあった。さすがに3000メートル級の山にはおいそれとは近づけないが、山の自然や景観には憧れる。

1つの山につき4ページで、山の歴史、名前の由来、著者が登った時の思い出、などが綴られる。自然を愛する登山家らしく、何度も、「混雑を避けて春先に登った」とか、「バスや土産物のない山」とか、の記述が見られる。軟弱登山愛好家としても、もちろん混雑していなくて、自然に近い姿の方が嬉しいが、道路などの整備によって明らかに山に近づきやすくなっており、その恩恵を受けているので、どうしようもない。

山に限らないが、例えば山の上に大きな旅館の廃墟が残っていたり、出店が規制されている観光地のど真ん中で既得権益にあぐらをかいて、醜い建物や平凡な食事で商売を続ける店など、おそらく数10年前にピークを迎えてそのまま衰退の道を進んでいるのだろうが、日本の縮図をみる思いがする場所も多い。

ところで、「後記」に選定基準が書かれている。
  • 品格
  • 歴史
  • 個性
付加的条件として、おおよそ1500メートル以上の高さを持つこと(例外は筑波山と開聞岳)。しかし最も重要な条件は、著者自らが登った経験のある山、という。そのせいで、いくつかの山が選からもれたそうだ。このような楽しい「後記」が待っていようとは思いもしなかった。

2011-01-24

Dweller On The Threshold, Tribe Of Gypsies

2011-01-20 購入

Vocal が替わったせいか、これまでにくらべて落ち着いたというか、やや暗いというか、おとなしいというか、そんな印象。それでも独特のラテンフレーバーや Roy Z のギターは健在。

2006年作品だが、5年間以上、発表されていたのを知らなかった... orz

2011-01-22

ソーシャル・ネットワーク

Official Site, 日本
2011-01-22

Harvard大学の寮で開発・公開がスタートした Facebook のサクセスストーリーと、Mark Zuckerbergの人間性、それにまつわる2つの裁判が軸。

どこまでが本当か分からなかったが、Facebook 開発前のシーンでは、懐かしい Netscape browser のような画面がでたり、日本語字幕では訳されていなかったが、Emacs でスクリプトを書く、というようなセリフがあり、面白かった。映画の主人公の役者は YouTube でみた Mark Zuckerberg の喋り方を非常によく再現していると思った。

Facebook に Napster 関係者 (Sean Parker) が関わっていた (いる?) というのは知らなかった。この世界は栄枯盛衰が非常に早い。10年後、Facebook はどうなっているだろうか。

それにしても、本編が始まる前に、これから上映される映画の宣伝を何本も見せられるが、日本の映画の他は全てアメリカ (ハリウッド?) の映画ばかりだった。せっかくシネマコンプレックスなのに、もっと幅広く上映しないのはなぜだろうか。日々のニュースでは、欧米の映画祭で○○賞を受賞、などを伝えているが。資本の関係だろうが。(他の国の映画も上映しているのかもしれないが)

ところで、当日はレイトショーだったせいか、はたまた Facebook の日本でのユーザ数の少なさのせいか、10人ぐらいしか入っていなかった。

2011-01-02

探偵伯爵と僕, 森博嗣

講談社文庫
2011-01-02 読了

小学生(?)が夏休みの宿題で日記的にミステリーを書いた、という雰囲気の作品。

2011-01-01

ほったらかし投資術, 山崎元, 水瀬ケンイチ

朝日新書
2011-01-01 読了

この本の内容は、著者のお二人がブログ等のメディアで発信されていることをまとめたもののようにお見受けした。

ただし、水瀬氏が現在の自身の投資スタイルにたどり着くまでの変遷は、部分的にはブログに書かれていたと思うが、そもそも投資をはじめたきっかけが今回初めて明かされている(と思う)。序章は、そこからインデックス投資の良い点・特徴などへ話が進むという構成。

面白いのは、どちらがどの部分を担当したかがわかるようになっているところ。それによって水瀬氏が実践編・商品ガイド編を担当したとわかる。その部分は簡潔に、しかし必要なことが書かれている。この部分を読んでいて、フィナンシャルプランナーなど業界とは無関係の著者がこのような「使える」内容を書いてしまうと(書けることがわかると)、本業の人はちょっと商売がやりにくくなったりしないか、などと、余計な心配をしてしまう(銀座人「みんなの投資」という先例もあるが)。

一方で、山崎氏が担当した理論編は、「誰でもリスク資産の組み合わせは同じでいい」とか「インデックスファンドの頑強性」、「外債は不要」(とまでははっきりとこの本に書かれているわけではないが)など、内容は個人的には非常に納得出来るものの、専門用語(アクティブファンドなど)がいきなり出てくるなど、記載は明らかに初心者向けでなく、全体的に見るとややアンバランスに感じる。

とは言え、みんな同じリスク資産の組み合わせで良い、と言い切ってくれたほうが、迷いがなくて良い(私は本書のお勧めにはしたがっていないが)。