2012-07-29

四季 夏, 森博嗣

講談社文庫
2012-07-29 読了 (2回目?)

」よりも成長した(=歳をとった)時期の話。

前作では、無駄なことをしない、とか、完璧とかということが連想されたが、少し歳をとって他の人の鈍さが理解できたのか、丸くなったのかわからないが、やや人間らしさが出てきた印象。

しかし「すべてがFになる」の舞台である妃真加島の研究所がほぼ完成した頃に起こった事件は、やっぱり凡人には理由が分からない。また「F」でも、天才ならば人を殺さなくてもよい方法はいくらでも考えついたのではないかと思うが、おそらく一般的な社会通念とかは通用しない存在なのだろう。

Vシリーズの準主役らしき絵画泥棒が出てくるのはご愛嬌か(名前は明かされていないので実際のところは誰だか分からないが)。そもそも森博嗣の小説では名前がわかったところで、多重人格とか別名とか、いろんな可能性があるので油断はできないのだが。

2012-07-28

四季 春, 森博嗣

講談社文庫
2012-07-28 読了 (2回目?)

辛抱たまらず、買って読んだ。早速これまでのシリーズでのキーパーソンがいろいろと登場する。

それも興味深いが、「僕」が誰なのか見失ってしまい、何度も前を見返してしまった。

「天才」の描写。それを崇める人もいるだろうが、大半の人は恐れを抱くのではないか。

「神様の仕事は、人を騙すことです」四季は言った。

2012-07-24

すべてがFになる, 森博嗣

講談社文庫
2012-07-24 読了 (4回目?)

さすがに何度も読んでいるので、大まかな筋は覚えていた。しかしそれにしても、ストーリィの流れや緊張感など、何度読んでもすごいと思える。

よく森博嗣は「理系」作家と呼ばれるようだが、表面的な意味での理系小説(?)は、この作品の他はそれほど無いのではないかという気がする。この作品中にてんこ盛り(UNIX, トロイの木馬, Virtual Reality, ...)で、かつ、これが森博嗣の小説の最初の作品になったので、ことさら強調されているのではないか。

外部のネットワークから大学のマシンにTELNETで接続するシーンは、今のご時世ではまずありえないので、昔の性善説的ネットワークの時代を垣間見る思いでなかなか微笑ましい。

2012-07-22

巨大地震 巨大津波 東日本大震災の検証, 平田直, 佐竹健治, 目黒公郎, 畑村洋太郎

朝倉書店
2012-07-22 読了

2011年11月に第1刷が出ているので、地震後にすぐ原稿を準備し始めたであろうことが想像できる。そういう意味では、知識を網羅的に盛り込んだ教科書的な本ではなく、それぞれの専門家がそれぞれの視点で地震・津波・災害・原発などについて「熱い」状況で語った、という感じだろう。

さまざまな調査・研究に基づく話は説得力がある。

畑村氏担当部分に寺田寅彦「津浪と人間」からの一節が引用されているが、人間と災害に対する関係について示唆に富む。

こういう災害を防ぐには、人間の寿命を十倍か百倍に延ばすか、ただしは地震津浪の週期を十分の一か百分の一に縮めるかすればよい。そうすれば災害はもはや災害でなく五風十雨の亜類となってしまうであろう。しかしそれが出来ない相談であるとすれば、残る唯一の方法は人間がもう少し過去の記録を忘れないように努力するより外はないであろう。

2012-07-13

赤緑黒白, 森博嗣

講談社文庫
2012-07-13 読了 (2回目?)

Vシリーズの最終作。シリーズ1作目に出た人物や、S&Mシリーズの重要人物(?)も登場。

この話に限らないが、瀬在丸紅子は確かに事件の謎は解いているが、だからといって物証がそろっているかどうかは別の問題なので、それだけで犯人が検挙できるかどうかは難しいのではないか、というおもしろくないことを考えてしまう。

ところで、この作品でS&MシリーズとVシリーズとの関係性が明らかになると記憶していたが、それほど明確に記述されているわけではなかった。頭の回転が速い人は気づくかもしれないが...

とすると、「四季」シリーズか。これは人から借りて読んだので、再読するためにはまた借りるか、買うかしないといけないなあ。

2012-07-11

朽ちる散る落ちる, 森博嗣

講談社文庫
2012-07-11 読了 (2回目?)

六人の超音波科学者」の感想には「流れ的にはちょっと一服」などと書いてしまったが、案に反して、話には続きがあった。

例の短篇集の中の話に登場した人物とか、この本だけ独立に読んでも楽しめるだろうが、シリーズを通じた大きな流れを追う楽しみは、全著作を読まないと味わえないかもしれない。そのように10作以上に関連を持たせているということは、やはり最初の構想段階からそれだけ執筆するという計画があり、それを実際にやってのけた、ということか。

ところで、今更ではあるが、森博嗣の話には、お金持ちが登場することが非常に多い。以前、たしか「森博嗣のミステリィ工作室」だったと思うが、「森博嗣が選んだミステリィ100冊」のなかに筒井康隆の「富豪刑事」が紹介されていた。作風は全く異なるが、もしかしたらそこからインスパイアされている部分があるのかもしれない。まあそれでなくても、金持ちという設定にしないと、変わった建物とか執事とかお手伝いさんとかが登場できないし、話の幅がだいぶ制限されそうだ。

2012-07-08

捩れ屋敷の利鈍, 森博嗣

講談社文庫
2012-07-08 読了 (2回目?)

今回は、Vシリーズでありながら、保呂草潤平となぜか西之園萌絵がメイン。タイトルの文字通り、捩れた屋敷が舞台だが、シリーズ全体の流れもちょっと捩れているか。タイトルもそれを暗示しているのかもしれない。

例のお宝も登場。

Vシリーズを読み直すのは3回目だと思っていたが、もしかしたら2回目かもしれない、と思ったのは、ラストの保呂草潤平と瀬在丸紅子が話すシーンの会話にドキッとしたから。もちろん1回目でもドキッとしただろうが、その時はなにも気付いていなかったのでそのまま忘れてしまっていたのに対して、さすがに大きな設定だけは忘れていないので、こんなところにこんなことが書かれていたのか、という感じを味わうことができた。

そういう意味では、(頭の回転が悪い・記憶力の悪い)私のような読者には、二度(以上)おいしい小説。

いつもどおり、この小説を読んでいない人にはなんのことか全く分からないと思うが、ネタばらしをしても仕方ないので、こんなところで。

2012-07-06

六人の超音波科学者, 森博嗣

講談社文庫
2012-07-06 読了 (3回目?)

山奥の研究所が舞台。閉ざされた環境(?)で王道か。

流れ的にはちょっと一服(?)
ミステリ部分には全く関係がないと思うが、短編集に出てくる話がすこし関連している。

立川志らくの解説が良い。まあ「解説」といっても、小説の解説とはなにか、まったく分からないが。

2012-07-01

恋恋蓮歩の演習, 森博嗣

講談社文庫
2012-07-01 読了 (3回目?)

今度は客船が舞台。乗り物シリーズ?

前回と同じ画家の名前がでる。ついでに前回と同じ、謎のルポライター(?)の名もでる。いよいよ中盤か。とはいえそんな気負いは皆無(?)

かなり強引な手法で(?)、いつものメンバー、特に紅子と練無も船に乗り込む。まあお約束か。

あとで読み返すと、あとがきに書かれているとおり、たしかに、「最初からネタをばらしているのである。」しかしいつもいつも、まったくトリックが分からない。まあそんなに考えながら読んでいるわけではないので、結末がわかっても、悔しい、とかの感情はなく、「えっ」と、ちょっと驚かされるくらいだが。

ちなみに英語タイトル "A Sea of Deceits" の Deceits は、だまし、偽り、などの意味があるようだ。