2011-08-27

ヨッパ谷への降下 自選ファンタジー傑作集, 筒井康隆

新潮文庫
2011-08-27 読了 (2回目?)

本当は「エロチック街道」という短編集が欲しいのだが、現在廃盤で、出版社の都合か、困ったことに傑作集とか銘打って、短編を別の組み合わせで出版してしまっている。それしか手に入らないのでしかたなく買うわけだが。

これはポピュラー音楽に例えると、オリジナルアルバムは廃盤で手に入らないが、複数のアルバムから集めてきたベスト盤だけ生きている、という感じか。私は音楽ではオリジナル至上主義者(原理主義?)で、iPodで音楽を聴くときも必ずアルバム単位でしか聴かない。シャッフル機能など使ったことがない。なのでめったなことではベスト盤は買わない。たいていの場合、ベスト盤というのはアーティストが作りたくて作るものではなく、レコード会社が元手をかけずに甘い汁をすするために勝手に企画するもの、という認識だ。だから、ときたま、レコード会社が勝手に発売した商品を買わないよう、アーティスト側が呼び掛ける、といった騒動が起こる。

音楽業界のことはこの本には関係ないが、どの作品も、世界観がしっかりと作られているというか、虚構なのに嘘っぽさが感じられないというか、異なる世界を旅する感覚、といえば言い過ぎかもしれないが、そんな気分を味わえる気がする。

「九死虫」という、8回までは死んでも蘇る虫の話。死を複数回経験できるからこそ生と死への洞察が深い。死を1度しか経験しないのは幸せかもしれない。

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