2009-12-07

カクレカラクリ, 森博嗣

メディアファクトリー文庫
2013-07-24 再読

これをミステリィと呼ぶのかどうかわからないが、他の作品と違って人は死なないし、非常に爽やか。

例によって引用したい部分はいろいろある。他の作品にも似たようなことが書かれていたと思うが、役に立たないことをするのが人間らしさだ、という考え方には非常に共感を覚える。今の御時世、なかなかそのようなことを認めてもらいにくいが。

終戦のローレライ (1-4), 福井晴敏

講談社文庫

2009-07-01

地震と防災 “揺れ”の解明から耐震設計まで, 武村雅之

中公新書

マネーロンダリング, 橘玲

幻冬舎文庫
海外投資を楽しむ会の紹介ページ
2011-03-26 読了 (2回目)

こういう小説を金融ミステリィと呼ぶのかは知らないが、海外と日本との税制の違いや、金融機関のサービスの知識を駆使して進むストーリィに引き込まれる。

宮部みゆきの「火車」を彷彿とさせる展開や、森博嗣を連想させるクールな文体。

小説としてもたいへん楽しめるが、いつものようにオフショアバンクや非居住者、海外投資などの知識も解説されていてお得かもしれない(まあ、税制や投資関連の事柄はどんどん変更されていくので、そのままでは役に立たないかもしれないが)。

元・財務省の官僚で現・民主党の衆議院議員、玉木雄一郎氏が解説を書いているのが異色だ。

(2011-03-26 記)

自己組織化とは何か 第2版 自分で自分を作り上げる驚異の現象とその応用, 都甲潔, 江崎秀, 林健司, 上田哲男, 西澤松彦

ブルーバックス

2009-03-17

科学者の9割は「地球温暖化」CO2犯人説はウソだと知っている, 丸山茂徳

宝島社新書
2009-03-17 読了

「地球温暖化」に対する反証を、豊富なデータにより分かりやすく示している、非常に有用な本。このような週刊誌的なタイトルにするにはもったいない。

特に、過去の気温の推定、特に寒冷化と、中国王朝の変遷や日本での飢饉の発生に相関があることや、10万年周期をもつミランコビッチサイクルの中で、温暖な時期は2万年程度しか続かず、今の温暖期は既に1-2万年続いている、という話は説得力が高い。これだけいろいろなデータを示されたら、近い将来寒冷化に転じる可能性が高いという気がする。

この本は、気候変動の話にとどまらず、人口・食糧問題など、とるべき政策を提案している。2020年にはかなりの危機が顕在化するという予想は非常に重い。自分自身の人生にも大きくかかわってくる。この予想が当たって欲しくはないが、温暖化騒ぎに浮かれていては、取れる対策も取れなくなる。悲劇だ。

2009-03-16

さらに進む地球温暖化, 住明正

ウェッジ選書
2009-03-16 読了

地球温暖化の懐疑論だけ読むだけでなく、本流のことも読まないとフェアでないと思い、読んでみた。するとやはり懐疑論者が指摘するようにつっこみどころ満載。いくらコンピュータシミュレーションで実際の物理現象を再現するといっても、モデル化されていない要素が多いし、パラメタを過去の実測データ (とはいえせいぜい過去100年程度) にあうように決めていくので、その期間の傾向をなぞる答え (温暖化) しかでないような気がする。この程度の研究を基に、生活や経済活動に制約を加えようとするのは恐ろしい。IPCCの中心をこのような気候学者が占めているからか?

また本書では、仮に予想が外れて温暖化が起こらないかもしれないが、それでも予防や保険的に、その被害防止に投資する価値があるというが、排出権をいくら買っても予防にならない。そもそも「温暖化」のもたらす負の面として、海面上昇, 豪雨・旱魃の増加, 生態系の変化, 疫病の発生などが挙げられているが、海面上昇以外は必ずしも起こるとは限らないし、海面上昇への対策としては、防波堤などの増強などが直接的で、スーパーのレジ袋を廃止したりすることはなんの対策にもならない。しかも「温暖化」すれば生態系は多様になり、生物にとっては喜ぶべき状況であるはずだ。少なくとも全世界的に考えれば、農業生産増が期待できる。なぜ一方的に「温暖化は悪」という刷りこみを信じるのか。

丸山茂徳が指摘するように、人類や全ての生命にとって、より望ましくないのは寒冷化だ。食べ物がなくなるし、暖房のためによりエネルギーが必要になる。予防・保険的対策をとるならむしろ寒冷化対策を検討すべきだ。

2009-03-12

謎の1セント硬貨, 向井万起男

講談社
2009-03-12 読了

様々なことを疑問に思う好奇心、その疑問を解決するための行動力、そしてそれを面白く読ませる文章力がすごい。

北米の車旅行は「イイ」。

2009-03-11

つくばぶらいと珈琲物語, いちご一江

文芸社
2009-03-11 読了

これだけ読みにくいエッセイも珍しいが、人を育てるということの大変さ、さまざまな人との出会いの素晴らしさ、そして、客商売は商品だけでなく、様々なお客・状況に適切に対応できる柔軟さや人間性が非常に大切だということが良く分かる。これをマニュアル化しようとしても無理だろう。日本の飲食業等のチェーン店で良い思いをすることが非常に少ないのはそのあたりに原因があるのだろうか (少なくとも欧米のように愛想良くすることくらいはしておいて損はないと思うが)。まあ自分の利用するような(安い)価格の店で 接客の良さまで期待するのはそもそも贅沢すぎるかもしれない。

それにしても、こんな文章でも出版されるとは。人に読ませることを考えておらず、自分の書きたいことを思いつくままに書いたとしか思われない。質の悪い blog 程度。

2009-03-07

デジタル「写真の学校」, キットタケナガ

雷鳥社
図書館
2009-03-07 読了

いままで7-8年コンパクトデジカメを使ってきたが、写真の基本的なことをほとんど知らなかった。本当に基礎的な、絞りやシャッター速度などの項目から書かれており、知りたいことがコンパクトにまとめられていた。とはいえ、絞りをいじれるカメラはあまり安くないと思うので、新しいのが欲しくなる。

2009-03-01

石油が消える日, ケネスSディフェイス

Kenneth S. Deffeyes, Hubbert's Peak: The Impending World Oil Shortage, Princeton University Press
秋山淑子 (訳)
パンローリング株式会社
図書館
2009-03-01 読了

圧倒的な情報量。これはぜひ原著も読んでみたい。

原油生産の将来についてよりも、むしろ、地球科学の入門書として良いのではないか。炭化水素の説明からはじまり、オイルウィンドウ、キャップ層、探査・掘削技術などなど、非常に興味深い。また、いかにもベテラン(老齢)教授の冗談混じりのおしゃべり、という感じの文体と、豊富な比喩で、読むのが苦にならない。それでいて注釈や参考文献、索引も載っているのは、日本語版としても良心的。(岩石の「電気抵抗」と訳している部分はおそらく「比抵抗」とすべきだろうが、用語で気になったのはその程度)

しかし、肝心の、なぜ石油の生産レートがベル型関数になるかの説明が (少なくとも私には) 見当たらなかった。

原著は何度か改訂されているようで、最新は2008年版というのが出ているようだ (この日本語版の底本は2003年版)。

2009-02-14

「格付け」市場を読む, 岩崎博充

光文社新書 (2004-03-20発行)
図書館
2009-02-14 読了

Standard & Poor's, Moody's Investors Service, Fitch Ratings, 株式会社日本格付研究所 (JCR), 株式会社格付投資情報センター (R&I) といった、いわゆる格付会社について。

2001年の Moody's の収入区分 (P.99, 資料4-2) が紹介されている。「ストラクチャードファイナンス」が一番の収入を占めているのに驚いた。事業会社の格付けよりも、昨今のサブプライムローン問題や金融危機の根源といわれている CDO (債務担保証券), RMBS (居住者住宅担保証券) などの格付けが、この時点で主要な柱の1つになっていたようだ。こんなところからも現在の危機の根の深さが分かり、ぞっとする。

自国通貨建てソブリン格付けで特に重要なのはインフレ率らしい。
  • AAA: 0-10%
  • AA: 4-15%
  • A: 7-25%
  • BBB: 10-50%
  • BB: 25-100%
日本の国債の格付けが低いのは、今後インフレが進むことが想定されているようだ。

その他:
  • 三國事務所という、発行体から手数料を取らず、投資家への情報提供料のみで運営している格付け会社がある
  • 1975年にニューヨーク市債がデフォルトした

2009-02-09

スティグリッツ教授の経済教室, Joseph E. Stiglitz

薮下 史郎【監訳】藤井 清美【訳】
ダイヤモンド社

図書館
2009-02-08 読了

市場原理主義か、保護主義か、という議論でなく、現実的な提案。割と政府等の適切な役割を重要視しているようだ。ブッシュ政権やグリーンスパン氏、IMF等の批判。どこの国もそれぞれの都合のよいように行動するということ。

2009-01-31

国境の植民地・樺太, 三木理史

塙書房
図書館
2009-01-31 読了

「樺太」(日本統治時代のサハリン南部) の歴史。しかし「歴史」は人がつくるということが良く分かる本。政府の政策の元に民間資本が投資し、産業が生まれ人も増えていく。当時建設された鉄道の一部はいまでも使われているようだ。著者の体験談などエッセイ的な部分がところどころに入るのも読みやすさを助けている。
  • 製紙業で栄える (王子製紙, 三井資本 etc.)
  • 炭鉱
  • 朝鮮人が多い (サハリン棄民という言葉があるらしい)
  • 戦争末期はロシア参戦の最前線

2009-01-25

ワーキングプア 解決への道, NHKスペシャル『ワーキングプア』取材班

ポプラ社
図書館
2009-01-25 読了

ワーキングプア 日本を蝕む病」の続編。韓国, 米国, 英国, 日本でのワーキングプアの事例と、解決に向けた取り組みのいくつかを紹介。前編では事例の紹介しかなかったので非常に重い読後感だったが、こちらはむしろ安心感が得られるかもしれない。しかし、当然ながら、ここで紹介されている、好転しつつある事例は、問題全体からすれば、ごく、ごく一部に過ぎないので、これでハッピーエンドとはならない。多くの人の努力とそれを支えるためのお金が必要。

徒然と思うことは、安売りを目玉にした小売業 (スーパー, ディスカウントショップ, 電器店, アウトレット, etc.) がこれだけはやっているということは、当然、そこで売られているものを作っている人や流通にかかわる人、売っている人の人件費も安いだろうし、かつ、安い製品を求める消費者が大勢いるということ。選挙だけでなく、こういう各個人の日々の消費行動の選択も、問題に関係している。

「おわりに」に、テレビ番組ではカットされた人の話が出てくるが、
「田老製作所」の社長のように、放送に至らなかった人も数多くいる。私たちが長年見過ごしてきた現実を、身をもって気づかせてくれた方々に、本著の最後に、心から感謝の気持ちを伝えたいと思う。
という文だけで、取材に協力してくれた人たちへの謝辞のつもりなのだろうか。時間の限られたテレビではなく本なのだから、少なくとも協力者の名前を挙げて謝辞を記載するのは当然なのではないだろうか (もちろん本人の意志は尊重されるべきだが)。

以下、メモ:
  • 賃金労働者に占める非正規雇用の割合 (2006年) は日本が 33% に対し、韓国では 55%

2009-01-24

実は悲惨な公務員, 山本直治

光文社新書
図書館
2009-01-24 読了

とかく「0か1か」という単純な構図でバッシングされることの多いお役所の内情を、ややお役所の都合に偏りぎみではあるが、冷静に紹介している。著者言うところの (北風と太陽の)「太陽的バッシング」が良いのかどうかは分からないが、たしかに、良くありがちな、一過的な「北風的バッシング」を繰り返しても良い方向へは行かないだろう。

法律を作れるのは代議員だけであり、その代議員を選んでいるのは有権者。現状のお役所の姿は過去・現在の有権者の選択の結果とも言える。そういう意味でも、飲み屋での愚痴話のように、バッシングでなにかが変わることは期待薄で、冷静・現実的・建設的な意見・意識が求められるのだろう。

そのような記事では、新聞や週刊誌は売れないかもしれないが。

2009-01-12

ワーキングプア 日本を蝕む病, NHKスペシャル『ワーキングプア』取材班

ポプラ社
2009-01-12 読了

現代日本の縮図。とにかく事例の紹介に終始し、解決策の提言はないが、副題の「日本を蝕む病」どおりの恐しい現実が進行していることがわかる。すべての政治家に知ってもらいたい。

大きな流れで見ると、戦後および高度成長期の状勢にあわせてできてきた日本の政治・官僚・産業などさまざまなシステムが、現状との不整合を起こしているにもかかわらず、様々なしがらみのために遅々として変更できないという構図が、ミクロにもマクロにも現れてきているのではないか。例えば、多くの製造業が、人件費の削減のため、中国などに拠点を移しているので、それらの企業で働くためには、かなりの割合の人がその海外拠点へ行かなければ仕事がないことになる。しかし多くの人は様々な理由により、おいそれとは海外に働きに出られないので仕事からあぶれてしまう。では国内の新しい産業が労働者を受け入れるかといえば、ライブドアに象徴されるように「出る杭は打たれる」状況で、なかなか進まない。

とにかく他人事でない。職業選択も、投資のように将来の状勢の変化を予測して行う必要があるということだろう。今のような、健全な労働者市場のない日本の状況では、ひとたび職を失うと、再就職は非常に困難で、そこから「負のスパイラル」に落ち込んでしまう。

このような問題に関連して、ベーシックインカムという考えに最近惹かれている。山崎元氏がblogで紹介しているのがわかりやすい (1, 2)。金額の多寡はわからないが、ある程度の生活の保証があれば、起業などもやりやすいだろう (借金を苦にした自殺などが減るだろう)。

だがこのようなドラスティックな変化はたぶん導入されないだろう。社会保険庁・厚生労働省・地方自治体等の少なくない仕事が必要なくなるので。郵政民営化ですら、小泉氏が総理大臣になる前から言っていて、あれだけ大騒ぎしてようやく実施されたのに、まだ見直そうとする勢力があるように、この国で何かを変えようとすると、既得権益をもつ勢力が強大で、非常に難しい。私は自分が死ぬまでに、おそらく年金などの改革はほとんど進んでいないのではないかと思っている。このように将来に希望を持てない人が大勢いるのではないか。そのため政治にも関心が持てないので、選挙の投票率も年々下がってきているのだろう。

不思議なのは、どの報道機関の世論調査でも、首相が変わるたびに、それなりに支持率が上昇することだ。本質は殆ど変わっていないのに。

と、かなり本筋から脱線してしまった。

岐阜の縫製業経営者のコメントが印象に残った:
まさか、国産を中国人がつくるようになるとは思わなかったね。

2009-01-11

太陽の欠片 月の雫, 大西隆博

文芸社
2009-01-11 読了

小説としてはやや物足りなさも感じるが、作者の主張ははっきりしている。学校の先生はとても大変な仕事だと再認識できる。

理想を言えば、子供の初等教育には、小・中学校以外の選択肢もあっていいと思うが。

2009-01-07

バルト三国をボルボで走る, 笹目二朗

エイ出版社
2009-01-07 読了

これは自費出版だろうか?
紀行文というと、その土地の風景・文化・人々の生活・それらから考えたことなどの文章を期待するが、そのようなものはほとんどなく、ひたすら日記調の記述と車の燃費・SEVというチューニングパーツ(?)の効果の話が続く。現地通貨のコインがないから駐車場や有料道路を避けるとか、どうでもよい話ばかりで、まともなルートマップもなく、泊まったホテルの名前も書いていないことが多い。
  • 本のタイトルが詐欺的。バルト三国の部分の日記は半分もない。20日超の行程中たった4日!
  • モータージャーナリスト、元自動車メーカー技術者がマイナスイオンとは...