2019-10-27

京大変人講座; 酒井敏, 小木曽哲, 山内裕, 那須耕介, 川上浩司, 神川龍馬; 山極寿一, 越前屋俵太

2019-10-27 読了
三笠書房

京大の「変人」が多数登場するのかと勝手に思い込んでいたが、講座のWEBにも書かれている通り、
この変人講座は、世の中に変人がいなければならない理由を語ることを第一の目的にしています。京大のとんでもない変人を紹介することを第一目的にしているわけではありません。というわけで、特に変人講師を集めているわけではありません。
というわけで、ちょっと変わったことを考えている人、ちょっと変わったものを対象に研究している人、たちのおもしろい話。

自分が全く聞いたこともないような話、という意味では、山内裕「なぜ鮨屋のおやじは怒っているのか」、川上浩司「なぜ、遠足のおやつは"300円以内"なのか」が面白かった。前者は「サービス」とは何か、後者は「便利を追求するだけでよいのか」、ということを考えさせてくれる。その意味では、那須耕介「人間は"おおざっぱ"がちょうどいい」の話の中でも「安心・安全」を他人に任せておいてよいのか、という問いが出てくる。

それ以外でも、驚愕の地球史、生物の系統樹がどんどんひっくり返ってきている話、そしてもちろん酒井敏「『ぼちぼち』という最強の生存戦略」は別の本で詳しく述べられているカオス・フラクタル・スケールフリーネットワークの話、のどれも、非常に知的好奇心を刺激してくれる。

2019-10-20

京大的アホがなぜ必要か カオスな世界の生存戦略, 酒井敏

2019-10-20 読了
集英社新書

新たなものが生まれる過程を知ることができる知的興奮と、カオス、フラクタル、スケールフリーネットワークなどの概念も解説される。

その前半部の話題をもとに、後半(第四章、終章)では、日本の昨今の「大学改革」がいかに危険な道を進んでいるか、危機感を持って語られる。

生態系を壊すような過度な競争を持ち込んではいけない
大学の存在意義は、結果的に出てきたその「成果」ではなく、そういう成果を生み出す「場」にある
生物界はアホのルールで回っています。人間も生物の一種である以上、もっとアホが堂々としていなければなりません。
大嫌いなやつ。絶対合わない、目も合わせたくない。そういう奴も含めての多様性だ。カエルにとってのヘビや、人間にとってのゴキブリこそが多様性だ。

正確でないかもしれないが、生物は40億年もカオスな世界を生き延びてきたが、環境の激変に対応するように進化したというよりは、そういう新しい環境に適応できるような種も突然変異などでできていて、それがたまたま環境の変化に適応する性質だったから生き延びた。そういう多様性を持っておくことが重要。

ナマコを最初に食べた人はすごい、とかねがね思っていたが、そういうチャレンジャー(この本では「アホ」)がいて、食の多様性がひろがった。「選択と集中」をして、例えば米だけ生産することに特化して、もし自然災害などで米がとれなかったら、全滅してしまう。

最後に、学生にむけたメッセージの中で、トーマス・エジソンの名言が引用されている。素晴らしい読後感を与えてくれる。

2019-10-19

知れば知るほど 行司・呼出・床山, 「相撲」編集部 (編著)

2019-10-19 読了
ベースボール・マガジン社

日本相撲協会に所属する、裏方の、行司、呼出し、床山の仕事に焦点をあてた本。その仕事内容の多様さゆえか、行司のページ数が非常に多い。取組の判定、場内アナウンス、番付表などの相撲字書き、などは知っていたが、巡業でも先に巡業地に乗り込んで、関係者の宿割りやバス割(誰がどのバスに乗るか)を行ったり、所属する相撲部屋の雑用などもされているそうで、非常に大変な仕事だと感心する。

呼出しもいろいろ仕事はあり、土俵を作ることから始まり(土俵築)、場所中の土俵の維持(掃除)、土俵回りの雑用(座布団を渡したり、水を渡したり)、太鼓をたたいたり。

床山は、書かれているのはほぼ、髪を結うこと、のみ。

それぞれの仕事で使う道具・材料を作っている会社というか職人も取り上げられている。行司の装束、草履、呼出しの裁着袴(たっつけばかま)、太鼓、床山が使うつげ櫛、びんつけ油。それぞれほとんど家族経営というか、職人仕事で成り立っているらしい。将来は大丈夫かと心配になってしまう。

2019-10-16

大相撲の道具ばなし, 坂本俊夫

2019-10-16 (?) 読了
現代書館

相撲にまつわる「道具」の蘊蓄話がいろいろ。道具と言っても、国技館のことも出てくる。

稽古廻しは相撲協会の事務所で売っている、だとか、面白いネタ多数。

2019-10-14

面白いとは何か? 面白く生きるには?, 森博嗣

2019-10-14 読了
ワニブックスPLUS新書

なにか、読むとスッとする。よくぞ言ってくれました、という感じか。
自分なりにまとめると、「面白さ」とは、他人から与えられるものは大したことは無く、自分で見つけるものが本物だ、ということ。

「孤独」が悪いもののように思わされている風潮へのコメントも全く同感だ。
なぜかマスコミは、「反孤独」的なプロパガンダを続けている。田舎や下町の人情などを大袈裟に美化し、人々の絆を必要以上に強調している。もちろん、そういったものには良い面もある。しかし、それはすでに本流ではない。むしろ今や貴重になり、マイナになり、滅びかけているからこそ、マスコミが取り上げているのだ。

「面白いこと」に出会ったときに、それを一般化し、抽象化すると、他で応用がきくことがある、というのも面白い。慣れたらできるようになる、とも仰るが、これはこれである種の能力が必要な気がする。

2019-10-01

必ずくる震災で日本を終わらせないために。, 福和伸夫

2019-10-01 読了
時事通信社

非常に多くの示唆に富む本。語り口調で書かれているので、割と厚い本だがすぐに読める。
  • 多くの企業などがBCPをつくっているが、周り(周辺環境、自治体、取引先、従業員、等々)も被災しているかもしれない、ということをどこまで想定しているか。
  • 市町村など地方自治体の場合、隣接する他自治体との連携は考慮されているか。
いつかは必ずくる大地震などに備えるといっても、なかなか実感がわかないが、想像力を働かせて、常日頃から意識し、対策を考えておくことが重要。

著者は建築学が専門で、自分は耐震設計などについては良く知らないので、「ベースシア係数」「地域係数」「振動特性係数」などなど、すごい考え方だなと思ってしまう。確かに、数値シミュレーションで実際に揺らせてみて、など、個別の案件でいちいちやるのは難しいのだろうが。