ポプラ社
2009-01-12 読了
現代日本の縮図。とにかく事例の紹介に終始し、解決策の提言はないが、副題の「日本を蝕む病」どおりの恐しい現実が進行していることがわかる。すべての政治家に知ってもらいたい。
大きな流れで見ると、戦後および高度成長期の状勢にあわせてできてきた日本の政治・官僚・産業などさまざまなシステムが、現状との不整合を起こしているにもかかわらず、様々なしがらみのために遅々として変更できないという構図が、ミクロにもマクロにも現れてきているのではないか。例えば、多くの製造業が、人件費の削減のため、中国などに拠点を移しているので、それらの企業で働くためには、かなりの割合の人がその海外拠点へ行かなければ仕事がないことになる。しかし多くの人は様々な理由により、おいそれとは海外に働きに出られないので仕事からあぶれてしまう。では国内の新しい産業が労働者を受け入れるかといえば、ライブドアに象徴されるように「出る杭は打たれる」状況で、なかなか進まない。
とにかく他人事でない。職業選択も、投資のように将来の状勢の変化を予測して行う必要があるということだろう。今のような、健全な労働者市場のない日本の状況では、ひとたび職を失うと、再就職は非常に困難で、そこから「負のスパイラル」に落ち込んでしまう。
このような問題に関連して、ベーシックインカムという考えに最近惹かれている。山崎元氏がblogで紹介しているのがわかりやすい (
1,
2)。金額の多寡はわからないが、ある程度の生活の保証があれば、起業などもやりやすいだろう (借金を苦にした自殺などが減るだろう)。
だがこのようなドラスティックな変化はたぶん導入されないだろう。社会保険庁・厚生労働省・地方自治体等の少なくない仕事が必要なくなるので。郵政民営化ですら、小泉氏が総理大臣になる前から言っていて、あれだけ大騒ぎしてようやく実施されたのに、まだ見直そうとする勢力があるように、この国で何かを変えようとすると、既得権益をもつ勢力が強大で、非常に難しい。私は自分が死ぬまでに、おそらく年金などの改革はほとんど進んでいないのではないかと思っている。このように将来に希望を持てない人が大勢いるのではないか。そのため政治にも関心が持てないので、選挙の投票率も年々下がってきているのだろう。
不思議なのは、どの報道機関の世論調査でも、首相が変わるたびに、それなりに支持率が上昇することだ。本質は殆ど変わっていないのに。
と、かなり本筋から脱線してしまった。
岐阜の縫製業経営者のコメントが印象に残った:
まさか、国産を中国人がつくるようになるとは思わなかったね。