2020-03-29

予防接種は「効く」のか? ワクチン嫌いを考える, 岩田健太郎

光文社新書
2020-03-29 読了(図書館)

「時の人」と言っても過言ではない、岩田健太郎氏の10年ほど前の著作。時期的に2009年の新型インフルエンザの流行のことにも触れられている。
過去、日本の予防接種にまつわる議論はとても幼稚(ナイーブ)だった。(中略)煮え切らない問題に白か黒か、善か悪か、という単純な図式でけりをつけようとしてきたのでした。
ワクチンを打つと副作用が出る(可能性がある)、ワクチンを打たないと病気になってしまう(可能性がある)、ダブルバインドな状態。成熟した大人の態度は、その煮え切らない問題を、「煮え切らない問題」としてまるごとそのまま受け入れ、落としどころを探るというもの。

マスメディアの問題も指摘されている。

  • 複雑で難しい問題なのにもかかわらず、マスメディアの世界では議論は矮小化され、単純化され、分かりやすい「物語」と化しています
  • 問題の原因究明よりも、責任の追及を第一義的な目標にしてしまっている
まったく同感。個人的には、多くのマスメディアが、事柄の全体像を客観的に伝えるよりも、特定の数人のコメントや匿名(「政府高官」「省幹部」とかの言い回し)のコメントで舞台裏を探るような記事など、大切なのはそこではないだろう、と思うことが多い。
予防接種を行う価値のあるワクチンというのは、この「予防接種をせずに病気に苦しむ人」と「予防接種を打って副作用で苦しむ人」とを比較し、前者が後者よりも大きい場合をいう

  • 医療の世界は「被害者がそこにいる時、必ず糾弾すべき加害者がいる」という論法がそぐわない
  • 実際には99%以上の方はワクチンによる被害を受けていない。ほとんどの場合はうまくいっている、まれにイレギュラーな事態が起きた時にそれを激しく糾弾する、という世界観を是としてほしくない
  • それをやればみなが自己弁護し、ときには隠ぺい工作に走る
  • すべてのプレイヤーが道義的な責任を感じ、悔やみ、そして原因の追究(責任の追及ではなく)と改善を行うべき
  • ワクチンを自分に打つのは、自分が病気にならないためだが、みんながそのようにすると 、ワクチンを打っていない人も病気にかかりにくくなる
  • 「前橋レポート」の批判的な検証
  • ワクチンの「外れ年」でさえも、死亡率を下げる効果がある
ホメオパシーそのものの価値や効能については、僕は完全にノーコメントです。ホメオパシーに頼る患者さんも否定しません。
世の中には、自然のものはよいもので、人工的なものはよくないものである、という素朴な信念をお持ちの方がいます。例えば、天然の調味料はよくて、人工調味料はよくない。無農薬野菜はよくて、農薬を使うのはよくない。...この「自然物か人工物か」という議論はナイーブな、意味の小さな議論です。...何の吟味もなしに「人工物だから悪いもの」と断じるのもまたナイーブな議論です。
 建設的な思考、合理的な考え方、という点で一貫している。このような「成熟した議論」のできる世の中にしていかなくてはならない。

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