2010-12-29

運は数学にまかせなさい -確率・統計に学ぶ処世術, ジェフリー・S・ローゼンタール

Jeffrey S. Rosenthal, Struck by Lightning: The Curious World of Probabilities
中村義作 (監修), 柴田裕之 (訳)
ハヤカワ文庫ノンフィクション
2010-12-28 読了

一般向けの確率の本ということで、条件付き確率などの解説を期待して読んでみた。どの章も身近なものから例をとっていて非常に読みやすい。カナディアンジョーク満載なのは好みが分かれるだろうが。しかも中間部には中休みとして、短編推理小説が入っている。カナダの森博嗣と呼べるかもしれない。それは文体という意味ではないけれど。

中でも、「モンティ・ホール問題」と名づけられた、昔のクイズ番組にあったような企画の確率の解説は、3通りもの説明を記載して読者の理解を助けている。

欲を言えば、もう少しだけ高度な内容も読みたかった。ベイズの定理の説明やそれを応用した薬の治験の話など。

著者の経歴に痺れる。

2010-12-16

オー・マイ・ガアッ!, 浅田次郎

集英社文庫
2010-12-16 読了

作者(?)のような人も作中に登場する、ややハチャメチャなストーリー。私自身はこれを読んでも Las Vegas に行きたくなったわけではないが、それだけハマる人がいるというのは興味深く感じる。

日本もカジノを合法化すべしという話がある。公営ギャンブル(とパチンコ)に利権があってなかなか難しいだろうが、きちんと合法化することで税収が上がる利点がある。ヤミ金融やギャンブル、性風俗など、規制することで闇に隠すのでなく、合法化して税収をあげる方が現実的ではないか。

こんなことを書いていたら、全然関係ないが、なぜか成田空港のことを思い出した。成田空港は作る際にあれだけ反対運動が激しかったが、今やなくなると困る人もかなりいるはず(千葉県知事が、羽田の再国際化に文句を言っていたはず: はじめから誘致していた人も当然いたのだろうが)。

なんにせよ外部からの投資は地元にとってありがたいはずで、総理大臣が「雇用が大事」と言っているわりには企業活動に余計な口だしばかりしているが、規制緩和して、「カタギ」を増やした方が財政にも良いのではという話。

まったく脈略がなくなってしまった。

2010-12-05

知的幸福の技術, 橘玲

2009-11-03 購入
2010-12-04 読了 (2回目)

昨年の今頃、文庫版が出版されてすぐに購入して読んだが、改めて読んでみた。内容的には、あとがきにあるように「世界にひとつしかない『黄金の人生設計』」などのエッセンスを集めたものに、「正しさの問題」など新しい話題が加わったものだが、時間が経過し、著者がいくつか年を取ったせいか、記述に熱さはなくなっている。むしろ一歩退いたところから、日本で暮らす人生の制約事項のいくつかを、皮肉も交えて教えてくれる。

日本メーカーの作る(日本のキャリアー用の)携帯電話は、日本ローカルの機能をどんどん追加して「進化」する様を揶揄して「ガラパゴス化」している、などといわれるが、金融・保険・不動産業界など(本作品には関係ないが、放送・新聞・農業なども)、様々な理由によって国際競争を逃れ、結果的に「ガラパゴス化」が進んでいる業界は多い(まあこれらは「進化」とはいい難いので、この形容は不適切かもしれない)。

ところでこの著者は、日本に住んでいるのだろうか。この本も文庫化に際して、執筆時から情勢が変化したものは脚注で新しい情報が加えられているのでそのようにも思われるが、しかし、情報だけなら、インターネットがあればどこからでも得ることができるので、どこにいても良いのかも知れない(余談だが、radiko.jpという、日本の中でも特定地域からしかアクセスできないサービスがあるのには驚いた)。

この著者の本を読むと、いつもながら、経済的な自由を達成しなければ真の自由は得られない、という事実を思い知らせてくれる。それでなくても、昨今の亡国的な政治状況をみると、ほとほと愛想を尽かせたくなる。