2020-02-06 読了
幻冬舎新書
病院、医者、薬、などにお世話になる場合に、役に立つ知識がいろいろと書かれている。はじめての医者にかかるときには「お薬手帳」を持っていくとよい、など。
本書の中に何度か出てくるフレーズが「後医は名医」。ある症状が出て、医者にかかると、その医者は、はじめの限られた情報で診断し治療方針を決める必要があるが、その医者が信用できなかったりして別の医者・病院にかかると、後の医者は、最初の医者の治療内容や処方した薬による効果、という重要な情報を最初の情報に加えて知ることができるので、より適切な治療が可能になり、患者から見た時に、後の医者が「名医」になることがある。
著者は、治療の途中で医者を変えることはあまりお勧めしないという。
薬を出してくれ、とか、こんな検査をしてくれ、とかを医者に言ってくる患者がいるらしい。また医者に指示された薬を飲む回数などを勝手に変更する人がいるらしい。この本では、いろいろと実例を挙げて、それらの無意味さというか不合理さを説明している。こんなに書いているくらいだから、ほんとうにそういう人がそれなりの数いるのだろう。そもそも医者は当然ながらプロなので、素人がちょっとネットで調べて得たような知識などとは比べ物にならない専門的な知識、経験、などにもとづいて治療を行っている。これをおさえたうえで医者とうまく付き合いたい。
細かい注意も行き届いている。例えば、救急車に乗せられていった場合、当然帰りは送ってもらえないので、履物や冬であれば上着などが必要になる、とか、だれか付き添いの人が必要になる、とか。
また六章の「家庭の医学」では、昔のいろいろな「常識」に対して、最近の医学で変わってきていることについていろいろ指摘されていて驚く。たとえば以下のようなこと。
- 擦りむいたときに傷口に消毒薬をつけてもあまり意味がない
- 風邪で熱が出た時におでこを冷やしたりしても体温を下げる効果はない
- 風邪をひいたときには風呂に入らないほうが良い、という常識があったが、それは昔はそもそも家に風呂がなくて銭湯に行く必要があったり、風呂が寒いところにあったり、風呂に入ると身体を冷やしてしまうおそれがあったためで、今はむしろ風呂に暖房があったりして入浴後も温かく過ごせるので、入浴を避けることに意味はない
- 「薬局で手に入る風邪薬より病院で処方される風邪薬のほうがよく効く」という人がいるが、薬の成分としては大差がなく、そもそも風邪を治すための薬はない(風邪薬は、せき、鼻水、頭痛など症状の緩和のためのもの)
- 鼻血が出た時に上を向く、とか、ティッシュペーパーを鼻に詰める、とかはあまり効果がなく、むしろ座った状態で前かがみになり、鼻翼を指で挟んで押さえる(圧迫する)と血が止まりやすい
著者は、現代はインターネットなどに玉石混交の医療情報があふれていて、その悪影響を肌で感じていらっしゃるようだ。それがこの本の執筆であったり、
情報提供サイトの開設であったりするらしい。ただでさえ忙しいお医者さんが、治療だけでなく、このような活動をしてくれていることに感謝したい。