国書刊行会
書名は「決まり手大事典」だが、面白かったのは序章の相撲の歴史と、第一章・基本動作と基本技。相撲用語でよくわからない言葉No.1の「おっつけ」の項目もあるが、本文ではやはり何のことかわからず、琴剣さんの絵の解説で分かった気になれた。
- 相手の腕に手のひらを下方から当てて上に持ち上げる
- おっつけた手と同じ側の足を前に踏み込んで腰を入れれば、相手は腕を伸ばされて重心も崩れることになる
第二章以降の個別の決まり手の項は、昭和初期やそれ以前の力士の取組も例に挙げられているが、動画などほとんど見られないだろうし、ふーん、という感じ。
「つき手」「つきヒザ」の項では、平成17年7月場所8日目の朝青龍-琴ノ若戦の判定を「審判の不手際」と言い切っているところがよい。この一戦は、朝青龍が完全に裏返しになったが、琴ノ若のまわしを離さず、ブリッジのような体勢になって止まった。琴ノ若は朝青龍を下敷きにするのを避けるため、左手をついて「かばい手」。行司の木村庄之助はそれを認めて琴ノ若に軍配を上げたが、物言いがつき、「朝青龍の体が落ちるのと琴ノ若の手がつくのが同時とみて取り直し」となってしまった。他の本かどこかで(どこで読んだか聞いたか思い出せないが)、この一番のようになったときには、下の力士(朝青龍)はけがを避けるため、まわしを離さないといけない、とのこと。「かばい手」のようなルールが認められているところが、相撲は相手があってのもの、ということを表していて奥深いところだ。