2019-04-21

平成大相撲決まり手大事典, 新山善一 (著), 琴剣 (絵)

2019-04-21 読了(図書館)
国書刊行会

書名は「決まり手大事典」だが、面白かったのは序章の相撲の歴史と、第一章・基本動作と基本技。相撲用語でよくわからない言葉No.1の「おっつけ」の項目もあるが、本文ではやはり何のことかわからず、琴剣さんの絵の解説で分かった気になれた。

  1. 相手の腕に手のひらを下方から当てて上に持ち上げる
  2. おっつけた手と同じ側の足を前に踏み込んで腰を入れれば、相手は腕を伸ばされて重心も崩れることになる


第二章以降の個別の決まり手の項は、昭和初期やそれ以前の力士の取組も例に挙げられているが、動画などほとんど見られないだろうし、ふーん、という感じ。

「つき手」「つきヒザ」の項では、平成17年7月場所8日目の朝青龍-琴ノ若戦の判定を「審判の不手際」と言い切っているところがよい。この一戦は、朝青龍が完全に裏返しになったが、琴ノ若のまわしを離さず、ブリッジのような体勢になって止まった。琴ノ若は朝青龍を下敷きにするのを避けるため、左手をついて「かばい手」。行司の木村庄之助はそれを認めて琴ノ若に軍配を上げたが、物言いがつき、「朝青龍の体が落ちるのと琴ノ若の手がつくのが同時とみて取り直し」となってしまった。他の本かどこかで(どこで読んだか聞いたか思い出せないが)、この一番のようになったときには、下の力士(朝青龍)はけがを避けるため、まわしを離さないといけない、とのこと。「かばい手」のようなルールが認められているところが、相撲は相手があってのもの、ということを表していて奥深いところだ。

2019-04-13

青白く輝く月を見たか?, 森博嗣

2019-04-13 読了
講談社タイガ

深海の底が舞台。人工知能とトランスファが大活躍という感じか。

気になった一節は:
人間ならば、生きている肉体があって、ある程度の生活があるから、それを保証することで契約が成立している。法律があり、禁じられていることをすれば罰を受けるが、それは最終的には肉体の拘束だ。したがって、肉体を持たないものは、法律の制限さえないことになる。

2019-04-10

私たちは生きているのか?, 森博嗣

2019-04-10読了
講談社タイガ

このシリーズは、おおよそ150年後くらいの未来の世界を描いているが、「ウォーカロン」という、生命体(?)というかロボットというか、の存在が一つの柱になっている。今回の作品ではそれがさらに一歩進んだ存在も出てくる。どちらにしても、現在の倫理観では受け入れられないだろうと思われるが、技術としては、確かに2-3百年のうちには実現するかもしれない。

人工知能やトランスファーといった存在も出てくる。「人間とは何か」「生きている、とは何か」という問いが必然的に出てくる。

ひょっとしたら、シリーズ全体の話の流れからすると、ちょっと一休み的な巻かもしれない。そうでないかもしれない。いずれにしても上記のような「存在」や「問い」の提示が魅力的な一冊。

「有限と微小のパン」を思い出した。