2011-03-21

Dan Ariely asks, Are we in control of our own decisions?

例えば、示される選択肢によって、我々は自身の選択を変えてしまう。

これは非常に興味深い。同時に、とても怖い。

プレゼン技術も素晴らしい。動画はこちら

省エネルギー(計画停電)について思うこと

地震・津波で被害を受けられた皆様にお見舞い申し上げます。

3月11日の超巨大地震とその津波の被害によって、多くの発電所が停止に追い込まれた影響で、東京電力と東北電力の供給地域では「計画停電」が実施されている。

一部の論客は、計画停電をするより、経済学の需要と供給の原理を働かせて、需要よりも供給が足りないのなら料金を値上げすれば、それに応じて需要は減る、という主張をしている(例えば、こちらこちら)。日本社会では値上げは「弱者いじめ」になるので、平時ならともかく、国難とも言われる時に、値上げなど言い出すだけで大バッシングが起こるだろう。

ということで、(実現可能性はともかく)別の策もないものかと考えてみる。

現在のテクノロジーをもってすれば、今にも簡単にできそうなことであるが、在宅勤務を大々的に普及すれば、通勤にかかるエネルギーを節約することができるので、非常に効果があると思われる。

私も何度か電車通勤を経験したことがあるが、毎日毎日、とんでもない人数の人々を運ぶためのエネルギーたるや、相当なものだろう。加えて、そのための時間も無駄である(通勤時間中に読書などするから無駄ではない、というかもしれないが、もし通勤時間が必要なければもっと他のこともすることが可能になるので、消極的な選択に過ぎない)。これが節約できるだけで、相当な省エネルギーになるはずだ。

また、今は災害の報道でなりを潜めているだけだろうが、「低炭素社会」などと言って地球温暖化を防ごうという、根拠があまりないことに、限りある財政支出をまわしている。これだけの人的被害が地震と津波によってもたらされているのに、例えば学校の耐震化よりも、被害も良く分からない温暖化対策に予算をまわすなど、全く無駄ではないか。もちろん、科学的に研究することは必要だと思うが、それを理由に、全国の事業所にエネルギー使用量を毎年1%削減することを義務付ける、とか、余計な規制をかけるのは、ナンセンスだろう。(こちらも、電気料金を値上げするなどの方が、使用量を削減するインセンティブを与えられる気がする)

日本では、東海・紀伊半島・四国沖での巨大地震も、今後数10年のうちにほぼ確実に発生する(例えばこちら)。温暖化するかどうか分からず、仮に温暖化したとしてもどのような被害がでるかよく分からないものに、限りある資源を振り向けている場合だろうか。

ブラック・スワン 不確実性とリスクの本質 (上)(下), ナシーム・ニコラス・タレブ (著), 望月衛 (訳)

The Black Swan, Nassim Nicholas Taleb
ダイヤモンド社 (上) (下)
2011-03-21 読了

「まえがき」からドキッとさせられることのオンパレードだ。だが読む前に想像していた、堅苦しい経済学の本とは全く異なり、読みにくいほどに冗談混じりのくだけた文体の、しかし非常に新鮮な、刺激的な自然観とでも言える話が展開される。

取り上げられる内容は、数学、経済学、物理学などにとどまらず、人間の認識論にまで及ぶ。つまり、人間は、頭の中で一旦、「理想」を作ってしまうと、自然はそうではないのに、理想に合わせて自然を見る目を歪めてしまう、ということだ。これは確かに思い当たる節がある。

「無知の知」だけでなく「不可知の知」

徹底的にガウス分布や「プラトン性」(こうあるべき、というものの見かた)というものを攻撃する。たしかにガウス分布は外れ値を無視してしまいがちだ。また、多くの場合、「平均」に意味はないが、拘ってしまう。(平均年収など)

それに関連して、特に金融・投資の分野では、ガウス分布(ノイズが打ち消しあう)に基礎をおいた「モダン・ポートフォリオ理論」を発展させたマーコヴィッツとシャープ、さらに彼らにノーベル賞を受賞した選考委員会をもこき下ろしている。これまで何度も「100年に一度」の異変が起こっているのに、そのような外れ値を扱うことのできないガウス分布に基づいた理論に、未だに機関投資家が頼っていることに吠えている。ただ、使っている方は、これくらいしか頼れるものがないのだろうが、著者は、そんなものでリスク管理ができていると考えるから、本当のリスクに備えられなくなるのだと主張する。

また、多くの金融機関が多様でなくなり、同様なツールで同じようなリスク管理をし、相互に強く依存するので、倒れる時も被害が甚大になる、というようなことを述べている。原著が出版されたのは2007年4月だそうで、サブプライムショックやリーマンショックよりも前にそのようなことを警告しているのは確かにすごいかもしれない。しかし著者自身がいうように、いつそれが訪れるかは予測することができない。

あと、投資に興味がある人にとって興味深いのが (下) P185 のグラフだ。ここには過去50年の、S&P500指数の変化と、その中で動きの大きかった(たった)10日を取り除いたもののグラフとを比べている。そして、その10日間を取り除くと、過去50年間のリターンは約半分になってしまうという。

マンデルブロを礼讃し、ガウス分布で表すことができるものは本当にランダムではなく、フラクタル的ランダムこそ真に気にする必要のあるランダムだと言っている。

著者は、ものごとを要約することにも注意が必要という感じだったが、一言で言うと、「先のことは分からない」ということと私的には解釈した。

とても稀な事象の確率は計算できない。でも、そういう事象が起こったときに私たちに及ぶ影響なら、かなり簡単に見極められる。

文庫で出てくれないかな。