新潮文庫
2022-12-28 読了 (図書館)
以前読んだ、安部龍太郎「信長はなぜ葬られたのか」と同様、小説ではなく、著者による、信長の歴史の謎に対する探求の記録。実際に歴史の舞台になった地を訪れ、考えを深めていく。
個人的に新しい観点と思ったのが、信長とイエズス会との関係、ひいては西洋文明との対峙という視点。ルイス・フロイスらが有名だが、著者の言を借りれば、「宣教師は正義の天使でもサンタクロースでもない」。著者の推理によれば、信長は宣教師たち(もしくは同行の技術者)から西洋の技術(例えば造船)を得た見返りに、明(中国)へ攻め入ることを約束させられていたのではないか、という。それがそのままではないにせよ、宣教師たちはなにか要求があってわざわざ信長のもとを訪れたのだろうから、単に布教の自由を求めたというだけでなく、なんらか見返りを求められていたというのはありそうに思える。
そのような背景を考えつつ、本能寺の変など、さまざまな出来事を見直せば、かなり見え方が変わってくる。これは日本史だけ勉強していてもだめだろう。