幻冬舎新書
2022-08-07 読了 (図書館)
織田信長が明智光秀に討たれた「本能寺の変」の真相について、様々な史料や著者の推測から、 近衛前久(太政大臣, 関白など歴任)を中心とする朝廷黒幕説を展開。 これ自体は異論もあるだろうが、私自身は、せいぜい司馬遼太郎の歴史小説などで知っている程度なので、初めて聞く話や初めて知った人物が多く、面白く読めた。
京都の阿弥陀寺(門前に「織田信長公本廟」という碑があるらしい)に織田信長の墓があるという話から始まって、なぜか静岡の西山本門寺に首塚があるという話、安土城に「清涼殿」跡が発見された話、などなど。
もっとも、直接、本能寺の変に関係する話は2章までで、あとの半分は、時代背景を理解する上でのキーポイントとして、大航海時代、戦国大名とキリシタンについて書かれている。確かに、我々が知っている戦国時代の話のほとんどは、江戸時代のフィルター(価値観)を通しているものが多いのだが、著者が指摘するように、鉄砲自体は国内で作れたとしても、火薬や鉛玉を作るための原料はほとんど国内では手に入らなかったので、貿易・商人の重要性はどれだけ強調してもしすぎということはないだろう。例えば、信長が足利義昭を奉じて上洛した際、将軍となった義昭から提示された副将軍などの地位を辞退し、代わりに堺などの都市の支配権を得たという話は、江戸時代的な感覚からいくと理解がし辛いが、そのような時代背景を考えれば納得がいく。
著者が挙げる江戸史観は
- 鎖国史観
- 身分差別史観
- 農本主義史観
- 儒教史観
イエズス会をはじめとする、キリシタンの影響についても触れられている。確かに、それだけ勢力があり、実力を恐れられたから、豊臣秀吉や徳川幕府から弾圧されたのだろう。 最後に触れられている、小石川伝通院にある千姫の墓が印象的。一度、見に行ってみたい。