2022-06-19

イノベーターズI, II (the INNOVATORS); Walter Isaacson (著), 井口耕二 (訳)

講談社
2022-06-12 読了 (図書館)

コンピュータを創造した人たちの物語。こう書くと、例えば ENIAC を作った人たちの話か? というように思われるかもしれないが、そうではなく、コンピュータの概念、PC、インターネット、ソフトウェアなどなど、コンピュータ、ネットワークとそれを取り巻く技術が今のような姿になるのに影響を与えた人たちのドラマが描かれている。

扱われている内容は幅広い。エイダ・ラブレスから始まり、チューリングなどの話もあり、「コンピュータ」を最初に開発したのは誰か? というような話、最初のプログラマー、コンパイラー、トランジスター、マイクロチップ、ビデオゲーム、インターネット (ARPANET, TCP/IP, パケット, etc.)(この辺までが「I」)、パーソナルコンピュータ (アルテア, ゼロックスPARC, etc.)、ソフトウェア(アップル, MS BASIC, ビジカルク, GUI, GNU, Linux, etc.)、オンライン(WELL, AOL)、WEB (URL, MOSAIC, blog, wiki, wikipedia, google)、といった話題というか、それにまつわる人々の話。

ただ、話とはいっても、淡々と歴史的な記載が続くわけではなく、大勢の人への取材に基づき、かつ、膨大な文献を参照し、歴史的な瞬間、セリフなどを可能な限り取り上げていて、プロジェクトXをさらに人間ドラマにした、といった感じか。そのため、例えば GUI 開発におけるスティーブ・ジョブズとビル・ゲイツの口論など、愛憎入り乱れるというか、読みやすく大変興味深い。

自分自身は「II」ぐらいからかなり身近に接しているので、例えば MOSAIC とか MS DOS とか、ダイアルアップとか、google の衝撃など、まさにイノベーションを身をもって体感できて、その意味では幸せかもしれない。まあ単に年を取っているだけとも言えるが。。

一つの軸として、「知的財産権」と「オープン」をめぐる立ち位置というのも面白い。例えばアップルの共同創設者のスティーブ・ウォズニアックは、自分が開発した回路の設計図のコピーをあるコミュニティで配ったというのに対し、ビル・ゲイツは自分たちの開発した BASIC が無断で配られたことに怒ったという話など、突き詰めれば個人個人の考え方に行きつくが、その時代・場所での文化の影響なども示唆されている。それにしても、今の Apple, MS, Intel, Google (Alphabet) など超大企業となった一方で、Linux などとくに営利を求めず技術基盤に貢献している、という両極端な構造は、感慨が大きい。