2021-08-22

数学ガールの秘密ノート 行列が描くもの, 結城浩

2021-08-22 読了(図書館)
SBクリエイティブ

相変わらず、たいへん分かりやすく、かつ、数学に親しみやすく書かれていて、これだけ数式など出てくるにもかかわらず、数学の本としては驚異的に読みやすい。

「秘密ノート」シリーズの方は、比較的レベルを抑えて、基礎的事項やそのイメージをつかむことを目的にしているように見受けられる。 その目的はおそらくうまく達せられている。図が多用されているのも、理解の助けに大いに役立っている。特に、いわゆる一次変換による2次元平面上での座標の移動(変換、投影)は素晴らしい。行列式の値との関連も図で説明されている。

2021-08-16

一度は行きたい日本の美城, かみゆ歴史編集部(編)

2021-08-16 読了(図書館)
学研

オールカラーで写真を見るだけでも楽しめる。旅行ガイドブック的でもある。しかしそれだけにとどまらず、コラム欄には個人的に知りたかった「破風」や「石垣」の種類などの解説が簡潔になされていてよかった。

  • 切妻破風
  • 入母屋破風
  • 千鳥破風
  • 唐破風

香川の高松城(玉藻城)や丸亀城にも、重要文化財に指定されている櫓など(丸亀城は現存天守)があるということで、今度機会があれば行ってみたい。

2021-08-15

図解城のすべて, 鈴木亨(監修), PHP研究所(編)

2021-08-15 読了(図書館)
PHP研究所

1995年発行とやや古い本だが、城の時代時代による変遷を、弥生時代の集落とかから解説。現在我々が「城」と聞いて思い浮かべる豪華な天守は戦国時代にはほとんどなく、多くは江戸時代に大名の権威を知らしめる目的などのために作られた、という。

個人的に知りたかった破風や石垣の種類についてはあまり書かれていなかったが、縄張(なわばり)、曲輪(くるわ)、本丸、などの説明が楽しい。また、堀の断面形状にも種類があるというのには驚いた(水を抜いた時の底面が平面のものだけでなく、半円形のもの(毛抜堀)や円弧が重なって角状の溝になっているもの(薬研堀)などがある)。

名城40 として、全国の城の中からおすすめの40か所の見どころが挙げられている。もちろん天守がある城ばかりでなく、一乗谷のように遺跡といったほうがよさそうなところも含まれている。

2021-07-18

数学ガールの秘密ノート 微分を追いかけて, 結城浩

2021-07-18 読了 (図書館)
SBクリエイティブ (2015)

「数学ガールの秘密ノート」シリーズ。「数学ガール」シリーズよりは、やや平易な内容というか題材を選んでいるように感じる。「数学ガール」シリーズ(といっても2冊しか読んでいないが)も式の展開は非常に丁寧で、1つ1つ追っていけば理解できるのはこの本も同じ。微分という概念を分かりやすく導入している。

そうはいってもそれだけでは終わらず、「パスカルの三角形」とか二項定理とか、ネイピア数 (e) とかが表れ、それらが関連していて面白い。

2021-07-11

とんでもなく役に立つ数学, 西成活裕

2021年7月11日読了 (図書館)
朝日出版社 (2011)

高校生への講義の記録。現実世界のさまざまな問題解決に、数学を用いるということを、実例を示しながら解きほぐしてくれる。

西成先生は「渋滞学」で有名だが、そのエッセンスもわかる。もっとも渋滞の問題に関してはまさに「渋滞学」を読んだほうが良い。ここで扱われているのは、東京マラソンのように大勢のランナーが出場するマラソン大会があるとして、出場者全員がスタート地点を短い時間で通過するためにはどうすればよいか、という問題を、その本質を抜き出す単純化・理想化と、そこで働くメカニズム(前の人が動かないと自分が動けない、前に動いたという情報が後ろに波のようにある速度で伝わっていく、など)を数式で表し、それを解く作業。もう少し解説があった方が分かりやすいとも思うが、とにもかくにも、現実の問題を、数理を使って最適化できるという、その一連のながれを体験することができる。

高校生くらいの時にこのような講義を体験するのは、非常に良い経験になると思う。一方で、講義をする方は、準備や教える力など、相当大変な感じ。

2021-06-20

海馬, 池谷裕二, 糸井重里


新潮文庫
2021-06-20 読了

キーワードは「可塑性」。
脳の神経細胞は年を取るごとにどんどん減っていくと言われるが、だからといって能力が衰えるわけではなく、「あるものとあるものとのあいだにつながりを感じる能力」は30歳を超えた時から飛躍的に伸びる、という話は生きる気力がわくし、まだまだ勉強しようという気にもなるし、とにかく非常に素晴らしい。

脳の性質を知ることで、ちょっとした生活・仕事のハウツー的な知識も得られる。以下、ほぼ引用。

  • 人間が整理できる記憶は7つくらい
  • タクシードライバーの海馬の大きさは、その勤務月数と正の相関がある 新しい刺激にさらされることが重要
  • 脳に逆らうことがクリエイティブ: 創造的なことをしたいと思っている人は、画一的な見方をしたがる脳に対して、挑戦をしていかなければなりません
  • やりはじめないと、やる気は出ない: やる気を生み出す場所は脳の側坐核にあり、そこの神経細胞が活動すればやる気が出るという仕組みです。刺激が与えられると活動する場所なので、「やる気がない場合でも、やりはじめるしかない」のです。
  • 寝ることで記憶が整理される
  • 生命の危機が脳をはたらかせる: 扁桃体や海馬をいちばん活躍させる状況は、生命の危機状況です。ちょっと部屋を寒くするとか、お腹をちょっと空かせるという状態は、脳を余計に動かします。
  • センスは学べる: 人間の認識は感性も含めて記憶の組み合わせ。創造性も記憶力からくる、と言える。新しい認識を受け入れてネットワークを密にしていくことが、クリエイティブな仕事というものに近づいていくヒントになる。ひとつ認識のパターンが増えると、組み合わせの増え方は、統計学的には莫大な数になる。
  • 問題はひとつづつ解こう: 脳は達成感を快楽として蓄える。達成感を生むためには、小さい目標を設定して、ひとつずつ解決していくといいのでは。

  • 心は脳が活動している状態を指す
  • 人間の本質は「変化」
  • 脳がコンピュータと決定的に異なる点は、外界に反応しながら変容する自発性にある

文庫版の追加対談にもドキッとすることが書かれていた。

 糸井: ほんとうにすべての可能性を考えながら生きていたら、きっと発狂しちゃいますよね。だから「わかっている範囲」を中心に暮らしているわけですけど、世界が「わかっている範囲」でしかないと思うのは、やはり傲慢だと思うんです。 

池谷: それはまさに科学者が忘れてはいけないことのひとつです。(中略)どんなものでもそうなのですが、システムは階層的になっていて、その階層ごとに真実があって、しかもそれが相互に影響を与えているんです...

2021-05-15

親方はつらいよ, 高砂浦五郎

2021-05-15 読了(図書館)
文春新書

先代高砂親方・元大関朝潮の「親方論」(?)

2008年7月の発行。朝青龍が不祥事で2場所出場停止処分をうけた年の次の年。まだバリバリの現役横綱だったころ。その不祥事の記憶がまだ新しいころに書かれた。そのせいかどうか、一章は朝青龍の写真とその騒動の話からはじまる。当時、マスメディアなどでは朝青龍だけでなくその師匠の著者もさんざん叩かれたが、叩かれた側の事情・言い分もわからないではない。朝青龍は治療などのため巡業を休んでモンゴルに帰国していたが、地元では当然ながら有名人で、

「日本の外務省を通じてモンゴル政府からの要請があり、友好のためにやった」
「当初はイベントでTシャツを配るだけの予定だったが、周囲に乗せられ痛みを押してほんの短時間サッカーをやった」

ということのようだ。そういわれると、そこまで厳しい処分を受けることだろうか、という気がする。そもそも巡業をけがの治療で休んだのは正当だろう。いまはコロナ禍で巡業どころでないし、個人的には巡業は日本相撲協会としての収益事業で、それが力士の仕事と言われればそれまでだが、年6日(90日間)ある本場所が終わったとたんに、毎日長距離移動をともなう巡業にでなければならないとなると、休む間もなく気の毒に思っていた。

親方論というか弟子の指導に当たっての考え方は興味深い。相撲の親方だけでなく、後輩や部下などの指導・教育は、手取り足取りやればよいかと言えば、自分で考える力が養えないし、さりとて放任でよいかといえば、素質があっても伸びない可能性があり、正解はなく、その加減も難しい。この本でも、相手の素質や性格などによって指導法を変える、というようなことが書かれていた。

3章では、2007年の時津風部屋新弟子急死事件の話から始まり、「角界の流儀」が語られる。ここの話の一部については同意できない。ほかの箇所では、時代によって弟子の気質などが変わってきているので、昔ながらの部屋の雰囲気や稽古内容ではだめで変えていかなければならない、というような真っ当なことを書いているのに、この部分では、この事件で協会理事長の責任を問うような報道などに対して、協会や相撲部屋の組織の説明をするだけで、その組織構造の問題が問われているという自覚が無いようだ。

私は、相撲という伝統的な競技が好きだし、その伝統も大切だと思っているが、それと法人としての日本相撲協会やそれにぶら下がっている相撲部屋という組織の伝統は別問題だと考えている。貴闘力が自身の YouTube 番組で指摘している通り、その組織には非常に問題が多く、「年寄株」「お茶屋」「八百長」などの例を挙げるまでもなく、改善すべきと思う。相撲部屋にいったん入門したら力士の都合では部屋を変われないなんて、親方の都合でしかない。相撲部屋という制度も特に必要とは思わない。

そんな朝潮さんも定年で師匠としては引退された。人柄がよく出ている本だった。