2021-05-15

親方はつらいよ, 高砂浦五郎

2021-05-15 読了(図書館)
文春新書

先代高砂親方・元大関朝潮の「親方論」(?)

2008年7月の発行。朝青龍が不祥事で2場所出場停止処分をうけた年の次の年。まだバリバリの現役横綱だったころ。その不祥事の記憶がまだ新しいころに書かれた。そのせいかどうか、一章は朝青龍の写真とその騒動の話からはじまる。当時、マスメディアなどでは朝青龍だけでなくその師匠の著者もさんざん叩かれたが、叩かれた側の事情・言い分もわからないではない。朝青龍は治療などのため巡業を休んでモンゴルに帰国していたが、地元では当然ながら有名人で、

「日本の外務省を通じてモンゴル政府からの要請があり、友好のためにやった」
「当初はイベントでTシャツを配るだけの予定だったが、周囲に乗せられ痛みを押してほんの短時間サッカーをやった」

ということのようだ。そういわれると、そこまで厳しい処分を受けることだろうか、という気がする。そもそも巡業をけがの治療で休んだのは正当だろう。いまはコロナ禍で巡業どころでないし、個人的には巡業は日本相撲協会としての収益事業で、それが力士の仕事と言われればそれまでだが、年6日(90日間)ある本場所が終わったとたんに、毎日長距離移動をともなう巡業にでなければならないとなると、休む間もなく気の毒に思っていた。

親方論というか弟子の指導に当たっての考え方は興味深い。相撲の親方だけでなく、後輩や部下などの指導・教育は、手取り足取りやればよいかと言えば、自分で考える力が養えないし、さりとて放任でよいかといえば、素質があっても伸びない可能性があり、正解はなく、その加減も難しい。この本でも、相手の素質や性格などによって指導法を変える、というようなことが書かれていた。

3章では、2007年の時津風部屋新弟子急死事件の話から始まり、「角界の流儀」が語られる。ここの話の一部については同意できない。ほかの箇所では、時代によって弟子の気質などが変わってきているので、昔ながらの部屋の雰囲気や稽古内容ではだめで変えていかなければならない、というような真っ当なことを書いているのに、この部分では、この事件で協会理事長の責任を問うような報道などに対して、協会や相撲部屋の組織の説明をするだけで、その組織構造の問題が問われているという自覚が無いようだ。

私は、相撲という伝統的な競技が好きだし、その伝統も大切だと思っているが、それと法人としての日本相撲協会やそれにぶら下がっている相撲部屋という組織の伝統は別問題だと考えている。貴闘力が自身の YouTube 番組で指摘している通り、その組織には非常に問題が多く、「年寄株」「お茶屋」「八百長」などの例を挙げるまでもなく、改善すべきと思う。相撲部屋にいったん入門したら力士の都合では部屋を変われないなんて、親方の都合でしかない。相撲部屋という制度も特に必要とは思わない。

そんな朝潮さんも定年で師匠としては引退された。人柄がよく出ている本だった。

2021-05-08

数学ガール 乱択アルゴリズム, 結城浩

ソフトバンククリエイティブ
2021-05-08 読了 (図書館)

タイトルからは、乱数を生成するアルゴリズムについてかな、と漠然と思っていたら全然違った。乱数を使ったアルゴリズム(自信なし)という感じか。 主たる内容は、ソートのアルゴリズムの解析で、その実行回数の期待値を数式で表したり。かなり式変形も出てくるが、途中を省略せず解説してくれているので、まあ話の内容をフォローする程度にはついていける。(全てをきちんとフォローしたわけではないが)

さりとて、アルゴリズムの話ばかりでもなく、途中では行列の話が出てくる。連立方程式との関係とか、写像とか。個人的にはその部分も非常にためになった。 数学はやや苦手意識があるが、しかしこのシリーズのおかげで非常に豊かな内容を持っているということも気づくことができたので、別の巻も読んでみたい。

2021-03-13

2045年問題 コンピュータが人類を超える日, 松田卓也

 2021-03-13 読了(図書館)

廣済堂新書


Ray Kurzweil などによって言われている技術的特異点の話。

SF映画などで描かれてきた知能を持ったコンピュータが実現したあかつきには「特異点」となり、それより未来は予測不能という予測を、著者自身の長年のコンピュータとのかかわりあいなどの話も織り交ぜ、紹介していく。

確かに、コンピュータの進歩は、ムーアの法則で知られるように、その性能を指数関数的に向上させてきた。また、「AI」「人工知能」という言葉を見ない日はないくらい、技術開発がどんどん進んでいるようだ。ただ素人目には、コンピュータが高性能になっても計算速度が速くなってきたということで、その本質は変化していないように思う。いまの多くの「AI」も、知る限りでは機械学習というべきもので、そこに独自の意識が出現するというものとは違うように感じる(知らないだけかもしれないが)。

余談だが、AIと聞いて思い出すのは、ひと昔まえ(ふた昔?)、ATOK (ジャストシステムのかな漢字変換ソフト)が、使用者の入力内容を学習し、変換候補を入れ替えて提示してくれる機能を「AI 変換」とか呼んでいた気がする。

そうはいっても、コンピュータに意識を出現させる、ということをまじめに研究している人たちは必ずいるだろうし、たとえ機械学習と呼ぶべき技術だとしても、その精度や応用範囲は日進月歩で進んでいるので、いつかは実現するのかもしれない。

本当にその日が来たら、多くの識者が指摘するように、なかなか人類にとってポジティブな未来は考えにくい気がする。

ローマクラブの「成長の限界」の話も取り上げられている。これまたかなり昔に、この話をきいたことがあったはずだが、その言葉自体忘れていて、懐かしく感じてしまった。

  • ロトカ・ヴォルテラの方程式
しかし話を読んで驚いてしまった。今は 2021 年だが、2000年代途中には人口はピークを迎えつつあるという予測であるという。確かに、日本はすでに人口減少フェーズに入っているし、これが先進国だけでなく、現在途上国といわれる国にも広がっていけば、早晩世界の人口はピークを迎えるだろう。

最後の方で、著者は、この成長の限界を打破するために、上記の技術的特異点を目指した「ゴッド・ライク・マシン」に賭けるしかない、と書いている。最後には、政治的な選択もおおくをコンピュータに任せる世の中もあるのでは、と提案というか妄想されている。その点だけ見れば、権力者が特定の利益集団にのみ配慮したような政策をとるのでなく、ベターな、最大多数の最大幸福を満たすような政策をとる方向に行くかもしれない。

2021-02-20

アインシュタインと相対性理論 -時間と空間の常識をくつがえした科学者, Jerome Pohlen (著), 大森充香 (訳)

Albert Einstein and Relativity for kids -his life and ideas with 21 activities and thought experiments, Jerome Pohlen
2021-02-20 読了(図書館)
丸善出版

図書館の子供向けの棚でたまたま手に取って読んでみた。そもそもの動機は、相対性理論のことが子供向けに解説されているのであれば面白い・理解の助けになるかもしれない、というものであった。しかし読み始めてみると、確かに彼の提案した数々の理論についての解説もあるが、それよりも伝記というのが一番近いだろう。

とにかく波乱に満ちた生涯というしかない。暮らした国だけでも、ドイツ、イタリア、スイス、現在のチェコ、アメリカ合衆国。そして2度の世界大戦が彼の生涯に大きな影響を及ぼしている。

相対性理論のことは分かった気になることも難しいが、彼が平和主義者で自由主義者、しかもその信念に従って行動を続けたということは非常に印象深い。

以下、気になる部分のメモ。

  • 1905年「驚異の年」:特許局に勤めながら5つの論文を執筆「光の粒子性、光電効果」「原子の大きさ(砂糖水の粘性と砂糖分子の大きさ)」「原子の存在の証明(ブラウン運動)」「特殊相対性理論」「E=mc^2」
  • 1922に、「1921年度のノーベル物理学賞」を受賞した

2021-02-14

数学ガール, 結城浩

2021-02-14 読了(図書館) 
ソフトバンククリエイティブ

高校生で習うくらいの数学しか出てこないかと思ったら、とんでもなかった。ゼータ関数とか、数列の母関数とか、降下階乗とか。。このような本格的な数学の本を最後まで読ませてしまうのだから、すごい本だ。日本数学会から出版賞というのを受賞しているのもうなずける。

数学の本と言えば、公理、定理、その証明、などが淡々と(別の言葉では、無味乾燥、なにが面白いのかわからないように)書かれているというのが相場と思っていたが、そんな浅はかな思い込みを軽々と超越する。

小説としてみたら、かなりあり得ない設定(図書館で数式と戯れる「僕」のそばに、数学好きな女の子が現れて一緒に問題に取り組んだり議論したりする)だが、そのような舞台設定のために、読み進めようとする動機付けが得られる気もする。

別の点では、式変形を一切省略せず書かれているので、なんとか話についていける(気がする)のも大きいだろう。

シリーズの別の本も読みたくなった。

2021-01-03

ダマシ × ダマシ, 森博嗣

2021-01-03 読了
講談社文庫

このシリーズ最終作らしい。前作が2年以上前で、作中でも時間が流れているようだ。 久しぶりなので、雰囲気を思い出すためにXシリーズの「ムカシ × ムカシ」以降を読み直してから本作を読んだ。 軽快な、というか、森博嗣らしい、人物同士の会話で物語が進んでいく。

このシリーズではちょい役の西之園が本作でも登場。

2020-12-28

作家の収支, 森博嗣

2020-12-28 読了
幻冬舎新書(図書館)

作家が自作の小説などで得る収入についていろいろと書かれている。それだけで一冊の本ができるというのも驚きだ。

印税も10%と決まっているわけではなく、その時々の契約による、という。入試問題などに使われると、別途使用料などを請求できる。

これを知ったからと言って、自分自身には特に参考になるわけではないが、「継続的に作品を書かなくてはだめ」みたいなことも書かれていて、当たり前だが非常にプロ意識を感じる。